ワールドカップの決勝、テレビで見てたんですが、、、とにかくあの場面は衝撃的でした。
フランス1-1イタリアで延長後半までもつれ込んで、気分的にもすごく高揚してたんですよ。
それを、いきなり頭から水をぶっかけられた感じがしました。。。
結果は皆さん知っている通りイタリアがPKを制して優勝。
しかし、最後の最後であのレッドカードを見たときに
大会全ての印象がまるでオセロのように一気に裏返ってしまったような気がします。
ジダン選手はもともと熱くなったときに手を出してしまうこともあるそうで、
テレビなどでもそういった過去のシーンを何度も見ました。
が、同じレッドカードでも今回のあの場面とは大きく違った印象でした。
あの頭突きをした前後、ジダン選手がイライラしたような仕草や
ぶちキレている言動が全くありませんよね。
頭突きの瞬間以外はレッドカードを受ける選手とはとても思えないCOOLな立ち振る舞いでした。
むしろ、テンションが下がっているというか落ち込んでいるというか、
そんなように見えます。
あのレッドカードの直前、イタリアのマテラッツィ選手との競り合いからそのあとのプレーにかけて、
マテラッツィ選手がジダン選手に何か声をかけ、
そのかけられた言葉に反応してジダン選手が頭突きをかますワケですが、
ジダン選手の地元フランスの報道などによると、
そのかけられた言葉に大きな問題があったようです。
「汚いテロリスト」「売春婦の息子」
そのように言われたと、現段階では専門家によって解析されていますが
真相はまだ明かされていません。
フランスには人権問題が根深く存在していることをご存知でしょうか。
オレ自身も勉強不足だったので、少しブログで整理してみようと思います。
沖縄タイムス社説
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20051109.html神戸新聞社説
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/00043713ss200611081000.shtml1960年代、フランスはアルジェリアやチュニジア、モロッコなど
アフリカの旧植民地から出稼ぎ労働者が移住してきます。
2000年代になった今もその2世や3世がフランスで暮らし、その人口は全人口ののおよそ7.4%に及び、
フランス政府もそれらアフリカ系の人種との「同化主義」、
つまり差別のない社会になるよう唱え、そのような政策を行っています。
しかし実際には差別はなくなりません。
アフリカ系人種であることを理由に仕事に就けなかったり、学校に行けなかったり、
そのような実態が多く存在しているのです。
昨年の秋頃からニュースとして扱われ始めた、フランスでの暴動も
やはり根底にある人権問題、人種差別によって起きてしまったことなのです。
このレッドカードの以前にもW杯フランスチームにはこのようなこともありました。
Yahoo!
http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=sports&d=20060629&a=20060629-00000192-kyodo-spoW杯で人種差別問題が波紋 フランス選手に侮辱行為
2006年6月29日(木) 19時26分 共同通信
サッカー界で深刻視されている人種差別の問題で、今大会でも憂慮される事態が28日、発覚した。国際サッカー連盟(FIFA)は選手に対する人種差別の根絶を目指し、大会中から「人種差別にNOを突きつける」と題したキャンペーンを推進していくと発表したが、波紋を広げそうだ。
AP通信によると、フランスのドメネク監督がW杯の決勝トーナメント1回戦のスペイン戦で重大な事件が起きたと告白。「競技場にバスが着くと、猿の鳴き声でチームの黒人選手がののしられた」と言う。試合前の国歌斉唱の間はスペインのファンが口笛を吹き、ブーイングを繰り返した。
両チームは以前にもスペインのアラゴネス監督がフランスのエースFWアンリに対する差別的な発言をしたとされ、罰金を科された経緯がある。FIFAは「不幸なことにサッカーにおいて、まだ存在する悪との戦いだ」と宣言。試合中の人種差別を根絶できない国・地域の協会に対しても厳罰処分を辞さない構えを示した。
こうした行為は数年前から欧州各国リーグでも、サポーターがアフリカ系選手を侮辱するなどし問題視されている。FIFAはドメネク監督の発言を受け、公式な訴えがあれば調査に乗り出す意向を示している。(共同)
そして、ジダン選手もアルジェリア移民者を両親に持つ2世なのです。
上の記事のようなことを受けて、FIFAは準々決勝4試合の2日間を
「反人種差別デー」として、ジダン選手はブラジル戦の試合前に
人種差別への嫌悪と反対を宣言しています。
このような背景がフランスにあることをもう一度念頭に置いて、
今回のジダン選手のレッドカード退場劇を思い出して下さい。
もし本当に人種差別的な、それも極めて残酷な表現を
マテラッツィ選手がジダン選手に向けて発しているのならば、、、
もちろんサッカー選手として見た時、ジダン選手の行為は許されるものではありませんが。。。
アフリカ系人種である背景を持ちながらフランス代表に選ばれた人間として、
本当の意味でフランス人としての誇りを持ってワールドカップに望み、
フランスに住むアフリカ系人種がいちフランス人として認められるように、
その責任を背負って最後のワールドカップを戦っていたとしたら。
あの寂しそうに退場するジダンの背中に見えた「寂しさ」「悲しさ」は
そういった思いが生み出した怒りを越えた、
いち人間として世界に対し感じた気持ちなのかもしれません。